ロルフィング セッション体験記(6)

けれど、ロルフィングは身体の感覚を呼び覚ますのである。自分の身体と向き合うことが求められる。痛みは痛みとして感じて症状が軽いうちにケアをしていく。私には、哲学的でとても深い話のように思えた。「身体」と言う言葉を「人生」に置き換えても意味が通じると思う。

2009年11月14日

ロルフィング セッション6

《背骨・仙骨を自由にする。体軸構造の確立。》

朝起きてみると、右肩が痛いほど凝っている。肩だけではなく、腕も腰も身体の右側が凝っている。右膝も痛む。外は雨が降っている。ロルフィングの日は、よく雨が降るなぁと思っていたら、なんだか憂鬱になってきた。

しかし、電車に乗っている間に雨はあがり、現地に着くころには青空が広がっていた。セッションまで少し時間があったので周辺を散歩する。公園の紅葉が真っ赤に色付いている。山が近いせいか、私の住んでいる地域に比べて紅葉が早い。

ロルファー(ロルフィングの施術者)の永井宏実さんが「今日は晴れましたね」と笑顔で迎えてくださる。いつものように身体の状態を聞かれた。前回のセッションで教えてもらった「お尻を振る」歩き方ができるようになってきたことを報告する。それから腰や肩が凝ること、特に身体の右側の凝りが酷いことなどをお話しする。

永井さんからは、鞄などを持つときに、「荷物」ではなく手の一部のような感覚で持つと良いと言うアドバイスを頂いた。もちろん片方の腕だけを使うのではなく、時々、左右に持ち替えるのは言うまでもない。

またリュックサックなどを使うのも(左右均等に負荷がかかるから)良いらしい。ただリュックだと似合う服装が限られてくるので、私にとっては取り入れるのが難しいと思った。

それから、次回のセッション7でコアの筋肉へのアプローチが終わって、セッション8からは「身体の統合」に入ると言う説明もあった。ロルフィングのセッションは、最初の1〜3回目で表層の筋肉に働きかける。4〜7回目でコア(深い部分)の筋肉に働きかける。そして8〜10回目で身体全体を統合していくわけである。

8回目のセッションを受けるまでに、自分がなりたい身体のイメージを考えておいて下さいとも言われる。私の場合、はっきりした目標があったわけではなくて、なんとなく好奇心でロルフィングの施術を受け始めてしまったので、これはなかなか難問である。

ただ単純に身体についての希望(願望)と言うことなら、肩凝りが楽になりたいとか、ダイエットしたいとか、あるいはムキムキのマッチョマンに変身して女性にモテたいとか、いろいろ思い付くのだけれど、「ロルフィングのゴール」は、そういうこととは、ちょっと違うような気がするのである。まあいい、セッション8までは、まだ時間があるから、あせらずに考えてみよう。

さて、今日のテーマは「仙骨」である。自分の身体を触りながら仙骨の場所を教えてもらう。仙骨は、左右の骨盤を繋ぐ位置にあり、また脊髄の一番下にあたると言う。恥ずかしながら私は、骨盤は一つの大きな骨で、仙骨と言うのは、「おまけ」みたいな小さな骨だと思っていたのだが、実際は全然違う。お尻の間あたりに手を当てると、仙骨に触ることができるのだが、かなり大きな骨である。

「仙骨」って言う名前も不思議な感じがする。仙人の「仙」と言う字がついているからだろうか?なんだか特別な骨と言う感じだ。その仙骨にワークをしたら、一体どんな効果があるのか楽しみである。

着替えをして下着になったあと、いつものように身体の前後左右の写真をとる。それから部屋の中を歩く。広々とした場所で歩くのと違って、部屋の中だとすべての動作が小さくなる。普通に道を歩いてるときには、もっと歩幅も広いのだが仕方ない。

永井さんは、私が歩く様子を観察している。「観察」と言ったら冷たい感じがするかも知れない。たしかに顕微鏡を覗く科学者のような冷静さも感じる。私には分からないけれど、永井さんの目から見れば、ちょっとした動作の中から様々なことが読み取れるのだろう。その一方で、生徒の成長を見守る先生と言うか、這い這いする赤ちゃんを見守るお母さんのような温かさも感じるのである。

続いて膝を曲げる。太ももやふくらはぎの緊張感から、やはり右足に力がかかっていることが分かる。しかし、永井さんからの質問は、仙骨の感覚から、左右の違いを感じられるか?と言うもの。何度かやってみたけれど、残念ながら仙骨では何も感じなかった。それだけ感覚が鈍くなっているのだ。

永井さんの話によると、これは私に限ったことではなくて、現代人は身体の感覚が鈍っているらしい。鈍っていると言うことは、ある一面では、痛みや不快感も感じにくい、感じなくてすむとも言える。

けれど、ロルフィングは身体の感覚を呼び覚ますのである。自分の身体と向き合うことが求められる。痛みは痛みとして感じて症状が軽いうちにケアをしていく。私には、哲学的でとても深い話のように思えた。「身体」と言う言葉を「人生」に置き換えても意味が通じると思う。

さて、施術ベッドに仰向けになる。足首に手を当ててもらいながら深呼吸をしてリラックスして行く。私は、毎回この時間は、期待でわくわくする。今日はどんなワークをするのだろうか?と思う。楽しくなって笑ってしまう。

まずは「皮膚の感覚を感じてみましょう」と言われる。とりあえず胸のあたりや腕の皮膚から感じて行く。皮膚の一部一部は感じられるのだが、なかなか身体全体の皮膚を一度に感じることが出来ない。さらに「骨が重くなるイメージをしましょう」と言われる。これも腕とか足とか一部づつしかイメージできない。

姿勢を変えて、うつ伏せになる。いよいよ施術が始まる。ロルフィングは、仙骨がテーマだからと言って、いきなり仙骨に触ったりはしない。一見すると関係のなさそうな(でも、本当は関係のある)部分から始まって、徐々に目的地を目指して行く。今回、永井さんが最初にワークを行ったのは、私の左の足の裏からだった。足の裏を押しながら伸ばしたり、足の指を動かしたりした。

それから、ふくらはぎ、太ももの裏側へと少しづつ上がって行く。ふくらはぎは少し痛かったが、その他は気持ち良かった。お尻に手を当てながら、足の膝から下をいろいろな方向に曲げる。どうやら股関節を緩めているらしいのだが、さすがに膝を90度に曲げて、足を外側に倒していったときには、自分のポーズを想像して可笑しくて笑ってしまった。

同じようにして右足もワークして行く。なぜか右足のときは、ふくらはぎも痛くなかった。左足にワークをしている間に、身体がコツを掴んでしまう。ロルフィングでは、そういうことがよく起きるらしい。

しかし、股関節を緩める段になって、永井さんから「右足の方が固い、自分で意識して固めてしまっている」と指摘される。自分ではそういう意識はなかったのだが、気付かないうちに力が入ってしまっていたようだ。永井さんの指示に従いながら右足に向けて呼吸を送るのだが、これも上手くいかない。呼吸のイメージが途中で止まってしまった。

右足が終わって、いよいよ仙骨にとりかかる。ぐっと力をかけて仙骨と骨盤の間を緩めている感じだ。さらに、腰もほぐして行く。腰をほぐしながら、「右足を伸ばしてください」と言われる。なんだか胴体の中から足が出てくる感じがすると言うと、それで良いらしい。ワークが終わると、右足の親指の位置が左足と違う。右足が長くなった感じだ。同じようにして左足も伸ばす。やっと左右の長さが揃ったようだ。

そう言えば、ロルフィングを受け始めてから、ズボンが短くなった気がする。永井さんにその話をしたら、冗談とかではなく、ごく当たり前のように「足が伸びたんでしょう」と言われる。もしかするとロルフィングを受けると足が伸びるのだろうか?そんな体験談は聞いたことがない。

まさか本当に足が伸びることなんてあり得ないと思いながらも、ちょっと期待してしまう。こんなことならロルフィングを受ける前に、ちゃんと身長や足の長さを計っておけばよかった。面白いデータがとれたかも知れないのに残念である。

下半身へのワークが終わると、今度は肩である。肩をほぐしてもらいながら、腕を伸ばす。ぐーっと伸ばして行く。そのとき腰に力を入れないようにと言われる。自分では、そんなつもりはないのだけれど、ついつい力が入ってしまうようだ。腰や肩が凝るのも、日常、自分が気付かないうちに無駄な力を入れているからかも知れない。

ベッドからゆっくり起き上がって歩いてみる。少しふらつく。膝を曲げたり伸ばしたりして、姿勢を調整したあと、もう一度、部屋の中を歩く。身体の変化にも少し馴れてきたので、今度は歩きやすい。

「足を前に出すときには、足を前に投げ出すような感じ」、「踏み出すのと反対側の足は、後ろへ残すような感じで」永井さんから注文がつく。なるべく言われたとおりに歩こうとするのだけれど、できない。

永井さんも「これじゃダメだ」と思ったのか、今度は「ハワイのビーチを歩くサーファーになった気持ちで」と、またまた難しいことを言う。「サーファーが無理ならハワイだけでもイメージして」と言われる。なるべくハワイのビーチの気分になろうとするのだけれど、気温が違い過ぎて現実(11月の日本)に引き戻されてしまう。

さすがの永井さんも、とうとう最後には匙を投げてしまったのか、「じゃあ、ハワイのことも全部忘れて、とりあえず何も考えずに好きなように歩いてみましょう」と言う。そんなに出来が悪かったのかなぁ・・・。

もう一度、ベッドに仰向けになる。肩と首をほぐしてもらう。これは気持ちが良い。セッションの締めくくりに、永井さんが私の腰の下に手を入れる。仙骨のあたりに、じっと手を当てている。毎回、最後にこのワークをするのだけれど、6回目になっても意味が分からない。

ベッドから起き上がって、また部屋の中を歩く。最後は、いつものように写真を撮って終了である。

ロルフィングの10セッションも今日で6回目まで終わってしまった。なんだか名残り惜しい。実際にロルフィングを受ける前は、10回も通えるだろうか?と不安に思っていたのが嘘のようだ。

着替えを終えて、永井さんと次回のセッションの予定について話す。あまり早く終わってしまうのも惜しいから、次は3週間ぐらい間隔をあけてみようかと相談してみる。「自由に決めて良いですよ」と言うお返事をいただく。それと同時に、ロルフィングの10セッションが終わったあとは、ロルファー(施術者)さんのサポートなしに、自分一人で身体の管理をすることになると言う意味のことも言われた。

そう言われて今回のセッションを振り返ってみると、ロルフィングを「卒業」したあとに繋がる伏線的な会話が多かったように思う。玄関を出るときに「今日のワークで、お尻がパフパフになりますよ」と言われる。さらに永井さんは、こう付け加えた。「嬉しいかどうかは、別にして」(笑)

女性にとっては「おしりパフパフ」って嬉しいのかなぁ。男性の私にとっては、あんまり意味がないなぁ。大体、自分のお尻の感触なんて覚えてないしなぁ。ロルフィングに「お尻パフパフ」効果があるかどうかは、残念ながら私には確認できない。

今日ワークをした筋肉が、まるで筋肉痛になったみたいな感じだ。けれど、不快な感覚ではない。ジムでトレーニングしたあとのような心地よい痛みだ。喉が乾いたので自動販売機でお茶を買って飲む。お腹がごろごろ鳴っている。

電車に乗っているとき気付いたのだが、座っている姿勢も変化している。自然と背筋が伸びているのが分かる。最初にロルフィングを受けた直後も背筋が伸びていたけれど、そのときよりずっと安定した感じだ。

11月15日(ロルフィング セッション6の翌日)
出かけようと思ってジーンズを履きベルトを締めたら、いつもとベルトの穴の位置が違う。ベルトの穴がひとつ余分に余っている。つまりベルトの穴ひとつ分ウエストが細くなったと言うことだ。

たしかに最近、ダイエットをして食事には気をつけていた。しかし、昨日同じジーンズを履いたときは、ベルトの穴の位置は、いつもと同じだったのである。たった一晩でベルトの穴ひとつ分ウエストが変わるものだろうか?もし、ダイエットが原因でないとすると、昨日のロルフィングの効果なのだろうか?

11月16日(ロルフィング セッション6の2日後)
昨日、ベルトの穴ひとつ分だけウエストが細くなった喜んだのであるが、スーツを着てみると、ベルトの穴の位置は普段と変わらない。なんだか、がっかりした。今日は、仕事で一日中パソコンに向かっていたが、肩凝りは感じなかった。上半身にもロルフィングの効果が出てきたのだろうか?

11月17日(ロルフィング セッション6の3日後)
朝歩いているときに「あっ、今日は、なんだか右足の小指が固まってるな」と気付く。指がぎゅっと縮こまった感じだ。それだけのことだけれど、自分の身体をちゃんと観察できるようになってきたのかな?と思うと少し嬉しい。

スーツを着たときも、ベルトの穴の位置までは変わらないけれど、ズボンのウエストに少し余裕が出てきた。やはり、ウエストは細くなっているようだ。

歩き方を工夫してみる。前回のセッションで習ったように、足を前に投げ出すような感じで歩いてみる。でも、まだ感じがつかめない。ハワイのビーチを歩くサーファーには、ほど遠い感じだ。

11月18日(ロルフィング セッション6の4日後)
仕事で東京に出張する。新幹線に乗ってシートを後ろに倒すと腰や首に負担がかかるのが分かる。以前は、朝早い出張のときは、携帯用の空気枕を使って新幹線の中で寝ていたのだが、この枕も身体に合わなくなってしまった。

おそらくロルフィングによって身体が変化したのだろう。いろいろ試したのだが、結局、背もたれに頼らず身体を垂直にしているのが一番楽だと分かった。しかし、この姿勢のままでは眠れない。困ったものだ。

11月19日(ロルフィング セッション6の5日後)
今朝は、冷え込んだ。歩いていても、気が付くと肩を縮めてしまっている。

11月20日(ロルフィング セッション6の6日後)
前のセッションのときに、足の裏が左右ちがうと教えてもらったのを思い出した。お風呂上がりに自分の足の裏を観察してみる。たしかに左右で微妙に違う。左の方が土踏まずがはっきりしているようだ。

11月21日(ロルフィング セッション6の7日後)
広島へ行く。3連休の初日とあって新幹線も混んでいる。福山駅までデッキで立っていた。広島駅でNさんと合流して、宮島へ行く。厳島神社に参拝したあと、焼き立ての牡蠣を食べながらお酒を飲む。冷えていた身体がぽかぽか温まる。

Nさんは、「ゆる体操」で有名な高岡英夫さんのファンで、身体のことについても勉強している。ロルフィングのこともよく知っていたので、その話題で大いに盛り上がる。Nさんもロルフィングを受けようと思って調べたらしいのだが、広島ではロルファーさんが見つからなくて断念したのだと言う。

夜は、「崖の上のポニョ」の舞台にもなったと言う鞆の浦から船に乗り、仙酔島に宿泊する。

11月22日(ロルフィング セッション6の8日後)
朝起きると足(太もも)が軽い筋肉痛になっている。昨日は、それほど歩いていなかったので少し不思議に思うが、新幹線が混んでいてデッキで立っていたせいだと思う。

ホテルの周辺を少し散歩する。天気が悪くなって来たので、名物の「江戸風呂」で日頃の疲れを癒す。

11月23日(ロルフィング セッション6の9日後)
仙酔島のホテルでYさんと待ち合わせをする。Yさんは、岡山県でカイロプラクターとして活躍されていて、私もよく身体のことに関して相談に乗ってもらっている。

お風呂でいろいろ話をするが、話題は身体のことが中心になる。Yさんが言うのには、多くの人は、自分の身体のことを全然知らないし、知ろうともしないとのこと。私自身もロルフィングを受けるまでは、自分の身体のことなんて、ほとんど考えていなかった。

帰りにYさんの施術院に寄って、身体を診てもらった。9月に捻挫した右足がまだ完全に治っていないこと、側彎症があること、それから首の骨が歪んでいるので、枕を今よりも低くした方が良いと言われる。

11月24日(ロルフィング セッション6の10日後)
夢にうなされて目が覚めた。以前に捻挫した右足の甲と足首に軽い痛みがある。

11月25日(ロルフィング セッション6の11日後)
9月に捻挫した右足の甲にハッキリとした痛みを感じる。

11月26日(ロルフィング セッション6の12日後)
今日はなんだか冴えている。仕事がとても順調に進んだ。身体の調子が良いと頭も冴えると言うことか。

11月27日(ロルフィング セッション6の13日後)
今日は久しぶりに肩が痛いほど凝った。仕事をしたり、コンビニで商品を見ているときに、身体が右側に傾いていることに気付く。

11月28日(ロルフィング セッション6の14日後)
本を読んだり足湯をしたりして、のんびり過ごす。ヨガの本を見て試しにやってみた。本の写真を見ていると簡単に出来そうなのだが、実際にやってみると、ポーズなんてとんでもない。準備運動の「足首回し」がやっとだった。身体が固い。

11月29日(ロルフィング セッション6の15日後)
昨日の足首回しが効いたのか、右足が楽になった気がする。久しぶりに呼吸の練習をしてみる。何度か練習している間に寝てしまった。

11月30日(ロルフィング セッション6の16日後)
足首回しをする。階段を降りるときに膝に違和感がある。寒いとどうしても歩いていて上半身が固まってしまう。足がだるくなってきたので、夜、ふくらはぎとアキレス腱をマッサージする。

12月1日(ロルフィング セッション6の17日後)
朝起きると腰が凝ってだるい。まだ、腰に力が入っているのだろうか?足首回しをする。夜、右足がずきずき痛む。

12月2日(ロルフィング セッション6の18日後)
今日も腰が凝ってだるい。足首回しをする。足首を回すと、同時にすねやふくらはぎの筋肉も動いているのが分かる。

12月3日(ロルフィング セッション6の19日後)
最近、呼吸の練習をしていなかったためだろうか?以前ほどスムーズに呼吸が出来ていないように思う。

寒いのでついつい身体に力が入ってしまう。腰がだるい。仕事のときに座る姿勢が、どうしても崩れてしまう。良くないとは分かっているのだけれど、楽な方に流される。

セッションとセッションの間が3週間と言うのは、少し長過ぎるのかもしれないと思う。せっかくの変化が消えてしまうような不安感もある。

12月4日(ロルフィング セッション6の20日後)
足首回しをする。相変わらず腰が凝っているので、少し腰を回してみるが、効果は感じない。

※ロルフィング(Rolfing®)は、ロルフ・インスティテュートによって商標登録がされている。